目次
不動産収入が未分割の場合の確定申告
不動産収入が未分割の場合とは
不動産収入が未分割の場合とは、相続開始時から遺産分割が成立するまでの期間についての家賃収入のことをいいます。
被相続人が賃貸不動産を所有していた場合で、遺言書がない場合には、誰が賃貸不動産を相続するかについて、相続人間で遺産分割協議を行います。遺産分割が成立すると遺産分割の効力は相続開始時に遡って生じることとなりますので、賃貸不動産の土地・建物については、相続により取得した相続人が相続開始時に遡って取得したこととなります。
他方、遺産である賃貸不動産から生じる家賃収入については、賃貸不動産の土地・建物と異なり相続開始時に遡って、賃貸不動産を取得した相続人が家賃収入を取得することには、なりません。相続開始時から遺産分割が成立するまでの期間についての家賃収入は、複数の相続人の共有であるとされ、各相続人が相続分に応じて取得することになります。
未分割の不動産収入の確定申告
相続財産の遺産分割が未分割の場合には、未分割の遺産から生じる所得は、相続人全員が法定相続分に応じて確定申告を行います。例えば、相続財産である賃貸不動産が未分割の場合には、賃貸不動産から生じる家賃収入は、相続人全員が相続分に応じて、各人の収入として確定申告を行います。また、その後に遺産分割が成立しても、実際の遺産分割の内容に従って、遡っての修正は行いません。
なお、未分割遺産から生ずる不動産所得について、国税庁のウェブサイトで取扱いが記載されています。
No.1376 不動産所得の収入計上時期
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1376_qa.htm
遺言がある場合とない場合の未分割の不動産収入の確定申告
①遺言書がある場合の未分割の不動産収入の確定申告
遺言書において、賃貸不動産を相続する者が指定されている場合には、相続開始時点で賃貸不動産は、遺言書で指定された者が取得することになります。この場合には、不動産収入に関して、未分割の期間が生じませんので、相続開始時点からの家賃収入を賃貸不動産を取得した相続人の所得として、その相続人が確定申告を行います。
②遺産分割協議をする場合の未分割の不動産収入の確定申告
賃貸不動産を相続する者を指定した遺言書がない場合には、相続人間で遺産分割協議を行います。この場合には、相続開始日から遺産分割協議の成立する日までの期間の家賃収入が、未分割の不動産収入となります。
未分割の家賃収入は、相続人全員が相続分に応じて、各人の収入として確定申告を行う必要があります。
遺産分割前の賃料収入の帰属についての最高裁判決
未分割の不動産収入の確定申告の取り扱いは、遺産分割前の賃料収入の帰属についての最高裁判決(平成17年9月8日)に従った内容となります。
最高裁判決(平成17年9月8日)
遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。
相続が発生した年と遺産分割が成立した年の確定申告
相続が発生した年と遺産分割が成立した年の確定申告は、次のようになります。
相続が発生した年の確定申告
×1年6月30日に相続が発生して、x1年12月31日時点で遺産分割が未了の場合の不動産収入は、次のように確定申告します。
①x1年1月1日から×1年6月30日の不動産収入
x1年1月1日から×1年6月30日の期間の不動産収入は、被相続人に帰属する収入となりますので、被相続人の収入として、被相続人の準確定申告で申告を行います。
②×1年6月30日から×1年12月31日の不動産収入
×1年6月30日から×1年12月31日の不動産収入は、相続人全員が法定相続分に応じて確定申告を行います。
遺産分割が成立した年の確定申告
その後、x2年2月28日に遺産分割協議が成立しました。この場合の不動産収入は、次のように確定申告します。
①x2年1月1日から×2年2月28日の不動産収入
x2年1月1日から×2年2月28日の不動産収入は、相続人全員が法定相続分に応じて確定申告を行います。
②×2年3月1日から×2年12月31日の不動産収入
×2年3月1日から×2年12月31日の不動産収入は、不動産を相続した相続人の所得として、不動産を相続した相続人が確定申告を行います。
特定の相続人の収入として確定申告するのは誤りか?
未分割の不動産収入を特定の相続人の収入とする場合
相続の実際の場面では、遺産分割が成立する前の年分の確定申告において、特定の相続人が家賃収入を受け取っており、その相続人の収入として確定申告を行っていることもあるように思います。
例えば、相続人の1人が、賃貸物件を相続することで相続人間で大まかな同意があるが、賃貸不動産以外の遺産分割が決まっていないため、遺産分割が未了である場合に、他の相続人も特定の相続人が遺産分割成立前の家賃収入を受け取ることについて、異議を表明していないような場合です。このような場合には、家賃収入を受け取っている相続人が、その相続人の家賃収入として、未分割の不動産収入を確定申告しています。
未分割の不動産収入の所得税の課税
相続人の誰か一人が、賃料収入の全額を所得として申告している場合は、その申告について課税庁が修正を指示することはない(是認されている)というのが、実務であるように思います。
多くの場合には、未分割の不動産収入を相続人に分散して不動産収入の申告をするよりも、誰か一人が不動産収入を申告する方が、所得税の負担が増えますので、相続人が自ら所得税の負担の大きな申告を行っている場合に、課税庁が否認するものではないように思います。
また、相続開始日から遺産分割成立の日までの間の期間について、「形式的」に遺産分割が未了であるとして、遺産分割が確定するまでの期間の賃貸収入が各相続人に帰属すると考えるより、遺産分割が未了であっても、相続人間で賃貸物件を誰が相続するかが自明である点や実際に賃貸物件の管理、賃料収入の受取状況の点から、所得税の課税上は、「実態として」、相続開始時で賃貸物件の取得者が決まっていたと考える方が、妥当な場面があるように思います。
未分割の不動産収入の贈与税の課税
賃貸不動産について遺産分割が確定するまでの期間の賃貸収入は、各共同相続人にその相続分に応じて帰属するものであると、共同相続人のうちの特定の人が未分割の不動産収入を受け取る場合には、課税関係の整理としては、他の相続人との間で贈与があったものとして、贈与税の課税対象となるのかが懸念されます。
この点について、贈与税の課税実務において、未分割の不動産収入について、相続人間での贈与があったものとして、贈与税の課税対象となるものではないように思います。
遺産分割が未了であったとしても、賃貸物件を誰が相続するかは、相続人の間では明らかな場合が多く、その者が賃貸物件を管理し、賃料収入を受け取っていることが多くあります。そうすると、未分割の不動産収入について、形式的に、共同相続人間で家賃収入の贈与があったと考えるより、実態として、相続開始時で賃貸物件の取得者が決まっていたと考える方が、贈与税の課税の観点で、実態を反映しているように思います。
