家族信託の費用は不動産所得の必要経費か?

家族信託の費用は不動産所得の必要経費となるのでしょうか?

「不動産所得の業務遂行上の必要性」があるか、がポイントとなります。

不動産所得の必要経費についての法令上の規定

所得税法37条1項では、不動産所得の必要経費について、下の2つを規定しています。

  1. 売上原価などの収入金額を得るために直接要した費用
  2. 販売費、一般管理費などで、所得を生ずべき業務で生じた費用

また、同法45条1項、同法施行令96条では、「家事費及び家事関連費の必要経費不算入」を規定し、次の支出が必要経費となるものとしています。

  1. 家事上の経費の主たる部分が不動産所得等の業務の遂行上必要であり、かつ、必要な部分を明らかに区分することができる場合の業務遂行上必要な部分
  2. 青色申告の場合で、取引記録により、不動産所得等の業務の遂行上直接必要であることが明らかにされる部分の金額

所得税法37条1項の「販売費、一般管理費などで、所得を生ずべき業務で生じた費用」については、一般的に、「その業務の遂行上通常必要であることが客観的に認められる費用」とされており、「通常性及び客観性」が求められるとされます。また、同法施行令96条で「その必要である部分を明らかに区分する」ことが求められており、必要経費の算入にあたり、「区分の明白性」が必要とされます。

家族信託の費用は不動産所得の必要経費か?

家族信託の費用

家族信託の費用として、下のような費用がかかります。

  1. 家族信託の設計、信託契約公正証書作成、契約立会いの専門家報酬
  2. 信託契約時の公証役場への手数料
  3. 所有権移転及び信託の登記の司法書士報酬、登録免許税
  4. 家族信託の導入後の信託報酬

家族信託の導入目的により必要経費になるか?

家族信託導入の目的が、高齢な不動産所有者の認知症対策の場合で、賃貸経営を長期的に円滑に継続するために必要な経費として、不動産所得の必要経費に算入できるのではないかとする見解が考えられます。

所得税法における必要経費算入は、家族信託の導入目的により必要経費に算入するかを判断するものではなく、「不動産所得等の業務の遂行上必要であり、かつ、必要な部分を明らかに区分することができるか」により判断します。

そのため、家族信託導入の目的だけで、不動産所得の必要経費とすることはできません。

家族信託の費用は必要経費となるか?

①家族信託の導入時の費用

家族信託の導入時の費用は、所得税法37条1項の不動産所得の売上原価、販売費、一般管理費にあたる経費ではありません。そのため、同法45条1項、同法施行令96条により、これらの費用が、「不動産所得等の業務の遂行上必要であり、かつ、必要な部分を明らかに区分することができる」かを検討する必要があります。

家族信託の導入時の専門家報酬や公証役場の手数料が、不動産所得の業務の遂行上必要であったかどうかは、家族信託の導入時の不動産所有者の年齢、健康状態、認知能力の状況、不動産物件の管理状況、修繕の必要性などを総合的に勘案して判断するものと考えられます。

家族信託の導入時において、不動産物件の老朽化による建替え等を予定している状況下で、不動産所有者が高齢であり、近い将来、認知症になった場合に、不動産経営の継続が難しいなど、認知症対策の必要性があるような場合であれば、業務遂行上の必要性が認められる場合があるように思います。

他方、家族信託の導入時において、不動産所有および賃貸物件などの状況から、不動産所得の業務遂行上の必要性があるといえる状況ではない場合には、家族信託の導入時の費用が、必要経費とならない場合も考えられます。

また、家族信託の際の信託財産が賃貸不動産以外の財産も含む場合には、家族信託の導入費用について、不動産所得の業務遂行上必要な部分を明白に区分することができないため、不動産所得の必要経費にはならないものと考えられます。

②家族信託の導入後の信託報酬

家族信託の導入後の信託報酬が不動産所得の必要経費になるかどうかも、不動産所有および賃貸物件などの状況から、不動産所得の業務の遂行上の必要性があるかどうかで判断するものと考えます。