相続税の未成年者控除

未成年者控除とは

未成年者控除とは

相続または遺贈により財産を取得した者のうちに未成年者があるときは、その未成年者の納付すべき相続税額は、その未成年者の年齢に応じて、算出税額から一定額を控除します。

未成年者控除の要件

未成年者控除の要件は、次のいずれにも該当することです。

  1. 居住無制限納税義務者または非居住無制限納税義務者であること
  2. 被相続人の法定相続人であること
  3. 相続開始時において18歳未満の者であること

令和4年3月31日以前の相続または遺贈については、「18歳未満」ではなく、「20歳未満」であることが要件とされていました。

未成年者控除の控除額

法定相続人のうちに未成年者がいるときは、その未成年者が納付する相続税額は、その未成年者の年齢に応じて、その者の相続税額から下の金額を控除します。

未成年者控除 ・・・ (18歳 - 相続開始時の年齢)× 10万円

年齢の1年未満は切り捨てて計算します。

(計算例)

相続開始時の年齢 10歳3ヶ月とすると
18歳 - 10歳3ヶ月 = 7年9ヶ月 → 8年となります。
控除額は、10万円×8年 = 80万円

控除不足額の扶養義務者からの控除

控除不足額がある場合

未成年者本人の相続税額から控除しきれなかった控除額は、その者の扶養義務者の相続税額から控除することができます。扶養義務者が2人以上いる場合の控除不足額は、次のいずれかの方法により配分します。

  1. 扶養義務者全員の協議
  2. 各扶養義務者の算出税額(配偶者の税額軽減後)による按分

控除不足額を控除できる扶養義務者

控除不足額がある場合に控除できる扶養義務者は、次をいいます。扶養義務者に該当するかの判定は、相続開始時の状況によります。

  1. 配偶者
  2. 直系血族
  3. 兄弟姉妹
  4. 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
  5. 三親等内の親族で生計を一とするもの(家庭裁判所の審判がない場合でも該当します)

扶養義務者が実際に扶養していない場合

未成年者控除の控除不足額がある場合に控除できる扶養義務者は、配偶者、直系血族、兄弟姉妹等をいいますが、これらの扶養義務者である者が、実際に未成年者を扶養していることまでは、控除不足額の扶養義務者の相続税からの控除の要件とはされていません。

そのため、配偶者、直系血族、兄弟姉妹等が、未成年者を実際に扶養していない場合であっても、未成年者控除の控除不足額の控除の適用があります。

過去に未成年者控除を受けたことがある場合

未成年者が2度以上の相続をした場合には、それぞれの場合に未成年者控除の適用を受けることができますが、その控除額は、既に控除を受けた金額の合計額が最初の相続の際に計算した未成年者控除額に満たない場合のその差額、つまり、現在までの控除不足額の範囲内に限ります。

次のいずれか少ない金額が控除できます。

  1. (18歳 - 今回の相続開始時の年齢) × 10万円
  2. (18歳 - 最初の相続開始時の年齢) × 10万円 - (過去の控除額)

未成年者控除の留意点

相続放棄していても未成年者控除は適用できる

未成年者控除は、その未成年者が相続を放棄した場合であっても、法定相続人である未成年者が、遺贈により財産を取得しているときは未成年者控除の適用を受けられます。

なお、相続放棄の場合に適用がないのは、次の規定です。

  1. 生命保険金等の非課税
  2. 死亡退職金の非課税
  3. 債務控除
  4. 相次相続控除

未成年者控除の適用後に相続税の納付がない場合は相続税申告は不要

未成年者控除は、配偶者の税額軽減のように相続税申告が適用要件ではありません。相続税の申告義務は、未成年者控除を適用した後に相続税額があるときとされており、未成年者控除の適用後に相続税の納付がない場合は相続税申告は不要です。

相続税法27条では、未成年者控除の適用後に相続税額があるときは、相続税申告書を提出しなければならない、と規定していますので、未成年者控除の適用後に相続税額がない場合には、相続税申告書の提出は不要となります。

相続税法27条~第十五条から第十九条まで、第十九条の三(未成年者控除)から第二十条の二まで及び第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定による相続税額があるときは、~相続税額~を記載した申告書を~提出しなければならない。

未成年者が財産を取得していないと適用がない

未成年者控除は、未成年者が相続または遺贈により財産を取得していないと適用がありません。未成年者控除の適用を受けるためには、未成年者が財産を取得している必要があります。また、未成年者が財産を取得していない場合には、その未成年者について、未成年者控除の適用がなく、控除不足額の扶養義務者の相続税額からの控除もできません。

なお、未成年者が財産を取得している場合で、贈与税額控除額を控除した結果、相続税額がなくなった場合には、その未成年者の算出税額がゼロのため未成年者控除額を控除できませんが、その控除できない額は、その者の扶養義務者の算出相続税額から控除することができます。

養子にも未成年者控除の適用はある

未成年者が養子の場合でも、未成年者控除の適用はあります。基礎控除控除額の計算では、法定相続人に含まれる養子の人数を制限する規定がありますが、未成年者控除の計算について、未成年者の養子の人数を制限する規定はありません。

法定相続人以外への遺贈の場合には適用がない

被相続人が法定相続人以外の未成年者への遺贈をする場合には、その未成年者について未成年者控除の適用はありません。

例えば、孫への遺贈がある場合には、孫が未成年者であったとしても、孫が法定相続人でない場合(子が存命の場合)には、未成年者控除の適用はありません。

海外在住でも未成年者控除の適用はある

未成年者が海外在住でも未成年者控除の適用はあります。ただし、未成年者が「居住制限納税義務者」、「非居住制限納税義務者」に該当する場合には、未成年者控除の適用はありません。

期限後申告で未成年者控除の適用がある

未成年者控除の適用について、相続税の申告期限内に申告することが適用の要件とはなっていません。そのため、相続税申告を申告期限後に行う場合であっても、未成年者控除の適用はあります。

更正の請求で未成年者控除の適用がある

当初の相続税申告で、未成年者控除の適用を漏らしている場合や未成年者控除の適用額が過少な場合には、過大となっている相続税額について、更正の請求を行うことで相続税額の還付を税務署に対して請求することになります。

更正の請求は、国税通則法及び相続税法の下の規定に従います。どのような場合に、どのような期間に相続税額の還付を受けられるかが、国税通則法及び相続税法に規定されています。

当初の相続税申告で、未成年者控除の適用がない場合や、未成年者控除の適用があるが、適用額が過少である場合が、更正の請求の対象となるかが、問題となります。

通常の更正の請求と言われる、「国税通則法の原則(国税通則法23条第1項)」による更正の請求では、税額の「計算誤り」があった場合が対象となります。未成年者控除の適用がない場合や適用額が過少である場合は、相続税額の計算誤りであると考えられますので、「国税通則法の原則(国税通則法23条第1項)」による更正の請求を行うことになります。

「国税通則法の原則(国税通則法23条第1項)」による更正の請求は、法定申告期限から5年以内に税務署に対して行います。

未成年者控除の相続税申告書の記載例

下の例ですと、井の頭清子さんは15歳なので、未成年者控除額は、(18-15)×10万円=30万円となります。