目次
相続税の申告において、最も節税効果が大きい制度の一つが「小規模宅地等の特例」です。この特例を適用できれば、亡くなった方が住んでいた土地や事業をしていた土地の評価額を最大で80%も減額できます 。
しかし、適用できる土地の面積には上限があり、複数の土地を相続した場合は計算が複雑になります。
この記事では、小規模宅地等の特例の基本から、複数の土地がある場合の計算方法、さらには特例の効果を最大限に引き出すための実務的なポイントまで、網羅的に解説します。
制度の基本:小規模宅地等の種類と限度面積
まず、特例の対象となる土地は、その利用状況によって主に4種類に分けられます。それぞれに適用できる限度面積と減額割合が定められています。

出典: 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
複数の土地がある場合の限度面積 計算方法
自宅と事業用地など、複数の種類の土地を相続した場合、単純に各限度面積を合計できるわけではなく、以下のルールに沿って調整計算が必要です。
ケース1:事業用・居住用の土地のみの場合
亡くなった方が住んでいた特定居住用宅地等(限度330㎡)と、事業で使っていた特定事業用宅地等(限度400㎡)の両方を相続した場合です。この組み合わせでは、合計で最大730㎡まで特例を適用できます 。
特定事業用宅地等の適用面積 ≦ 400㎡
特定居住用宅地等の適用面積 ≦ 330㎡
計適用面積 ≦ 730㎡
ケース2:貸付事業用の土地が含まれる場合
アパートの敷地などの貸付事業用宅地等(限度200㎡)と、それ以外の宅地(事業用・居住用)を組み合わせて適用する場合は、計算が少し複雑になります。この場合は、以下の計算式を使って全体の上限が200㎡*になるように調整します 。
(特定事業用宅地等の面積 × 200/400) + (特定居住用宅地等の面積 × 200/330) + 貸付事業用宅地等の面積 ≦ 200㎡
この計算式は、次に解説する「割合」の考え方を使うと、より直感的に理解できます。
【実務の視点】特例を最大限に活用する3つの戦略的ポイント
制度を理解した上で、さらに節税効果を高め、円満な相続を実現するための実務的な3つのポイントをご紹介します。
ポイント1:減額効果が最も高い土地から優先的に適用する
限度面積の都合上、所有する土地の全てに特例を適用できない場合、「どの土地を優先するか」が節税額を左右します。判断基準は、「1㎡あたりの減額金額」が最も大きい土地です。
1㎡あたりの評価額 × 減額割合(80% or 50%) = 1㎡あたりの減額金額
例えば、土地の総額が同じでも、1㎡あたりの評価額が高い都心の土地に適用する方が、郊外の土地に適用するより効率的に評価額を圧縮でき、節税効果は高くなります。
ポイント2:限度面積は「割合」で考えると計算が分かりやすい
前述の複雑な計算式は、「特例を使える上限の枠を100%として、何%使ったか」という割合で考えると非常に分かりやすくなります。
例えば、居住用の土地(限度面積330㎡)を110㎡で適用したとします。この場合、
110㎡ ÷ 330㎡ = 約33.3%
となり、特例の枠を約33.3%使ったことになります。
残りの枠は「100% – 33.3% = 66.7%」です。この残りを貸付用の土地(限度面積200㎡)で使いたい場合、適用できる面積は、
200㎡ × 66.7% = 約133㎡
と簡単に計算できます。この考え方を使えば、どの土地をどれだけ適用できるか直感的に把握できます。
ポイント3:相続人全員の税負担を考慮して適用者を決める
この特例は「誰が取得した、どの土地に」適用するかを選択します。この選択は、相続人個々の納税額だけでなく、相続全体の納税総額に影響を与えます。
一般的には、より高い税率が課せられている相続人が取得した土地に適用した方が、相続全体の税負担は軽くなる傾向があります。
重要なのは、特例の適用には相続人全員の同意が必要であるという点です 。特定の相続人だけが有利になる選択は、後のトラブルの原因になりかねません。遺産分割協議の段階で、専門家を交えて税額をシミュレーションし、全員が納得できる形で進めることが円満な相続の秘訣です。
まとめ
小規模宅地等の特例は、相続税対策の要となる非常に強力な制度です。しかし、その効果を最大限に引き出すには、基本的な計算ルールを理解するだけでなく、
①減額効果の高い土地を優先する
②割合の概念で限度面積を捉える
③相続人全体の利益を考える
といった戦略的な視点が不可欠です。
相続税の申告や特例の適用は専門的な判断を要します。ご自身の状況に合わせた最適な方法については、ぜひ一度、税理士にご相談ください。

