扱いにくい「貸宅地」、本当に物納できる?手続きの重要ポイント

「先代から引き継いだが、地代も安く、更新や建て替えの交渉も大変…」

「いざという時に売却も難しい…」

多くの地主様にとって、権利関係が複雑な「貸宅地」は悩みの種になりがちです。では、この扱いにくい貸宅地を、相続税の納税(物納)に活用することはできないのでしょうか?

結論から申し上げますと、貸宅地であっても、一定の要件を整えれば物納は可能です 。

更地など権利の付着していない不動産が他にあったとしても、貸宅地を優先して物納することもできます 。しかし、そのためには更地の物納よりも多くの手続きと、何より「借地権者」との慎重なやり取りが必要になります 。

今回の記事では、貸宅地の物納を成功させるための3つの重要手続きを解説します。

手続き1:借地権者との「境界確定」

まず基本となるのが、土地の境界を明確にすることです。

・借地ごとの分筆: 借地人が利用している区画ごとに境界を確定させ、分筆登記を行います 。

・越境物の確認: この際、塀などの所有者がどちらにあるかを確認し、隣地からの越境物がないかもチェックします 。

・借地権者の立ち会い: トラブルのない状態で借地権者に立ち会ってもらい、借地境界を確定させることが重要です 。

貸宅地は、長年の利用の中で境界が曖昧になっているケースも少なくありません。物納を成功させる第一歩は、この境界を法的に明確にすることです。

手続き2:賃借人と建物所有者の「名義の特定」

次に、土地の契約関係を正確に整理する必要があります。

借地権は「建物を所有するために土地を借りる権利」です 。そのため、物納の際には土地賃貸借契約上の「賃借人」と、その土地の上にある建物の「所有者(登記名義人)」が一致していることが原則となります 。

よくあるのが、親の名義で土地を借り、その土地に子の名義で家を建て替えているケースや、建物の名義が亡くなった先代のままになっているケースです 。

もし名義が異なっている場合は、その理由を明らかにする書類を提出しなければならず、借地権が誰に帰属するのかという根本的な確認が必要になります 。

手続き3:借地権者からの「協力取り付け(誓約書)」

これが貸宅地の物納における最大のポイントかもしれません。

底地権(地主の権利)を物納すること自体に、借地権者の承諾は必要ありません 。しかし、提出書類の一つに「(反社会勢力でないことの)誓約書」というものがあり、これには物納されることが明確に記載されています。

この誓約書には、借地権者の署名・捺印が必要不可欠です 。

つまり、借地権者に物納することを知らせずに手続きを進めることは、事実上不可能となっています 。地主が国に変わることについて借地権者へ十分に説明し、協力を得ることが求められるのです 。

【上級編】物納申請を交渉カードに使う「権利調整」

物納の手続きには時間がかかり、借地権者との折衝も不可欠です 。そこで、物納の準備と並行して、より有利な納税を目指す「権利調整」という手法も検討する価値があります。

「地主が国になる」という状況は、借地権者にとっても大きな変化です 。これを交渉のきっかけとして、以下のような選択肢を探ることが可能です。

借地権買戻し: 逆に地主が借地権を買い取り、完全な所有権の更地として第三者に売却する方法です 。

同時売却: 地主と借地権者が協力し、第三者へ完全な所有権の土地として一緒に売却し、代金を分け合う方法です 。

物納の準備は、土地の境界を確定させ、権利関係を明らかにする作業であり、これは「土地を商品化する準備」と何ら変わりません 。物納を視野に入れつつ、様々な可能性を探ることが、資産価値の最大化につながります。

まとめ:貸宅地の物納は、専門家との連携が成功の鍵

ここまで見てきたように、貸宅地の物納は可能ですが、その道のりは平坦ではありません。境界確定から借地権者との交渉まで、専門的な知識と慎重な対応が求められます。

しかし、これは見方を変えれば、長年の懸案であった扱いにくい貸宅地を整理し、円滑な相続税納税を実現する絶好の機会ともいえます。

貸宅地の物納や権利調整は、高度な専門知識と交渉力が求められます。吉祥寺の税理士法人アンサーズ会計事務所では、地主様の長年のお悩みに寄り添い、物納手続きのサポートから権利調整の交渉まで、最適な解決策をご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。