不動産オーナーの法人活用の3つの方法

個人で所有している不動産について、「法人」を活用するには、通常、次の3つの方法をとります。税負担の軽減効果が大きいのは、③建物移転方式ですが、建物移転に何らかの問題がある場合には、②一括借り上げ方式を利用することもあります。

管理料方式

管理料方式の概要

法人が個人から委託を受けて、賃貸不動産の管理業務を行う、という建て付けをとります。家賃収入は、建物所有者である個人へ入金され、個人が法人へ、管理料の名目で支払いを行います。個人は、法人への管理料を経費と計上でき、法人でその分の売上が計上されます。個人の所得税負担が高い場合に、個人から法人へ所得が移転することにより、所得税の税負担軽減が見込まれます。

 

管理料方式の留意点

個人から法人へ支払う管理料の水準が、管理業務の実態に合わない水準の金額だと、税務調査の際に、個人の経費として認められない可能性があります。一般に、不動産会社が家賃の集金管理などを行う場合の管理手数料は、家賃収入の5%程度ですから、この水準を大きく超える管理料の金額を設定する場合には、その設定水準の合理性を慎重に検討すべきです。

また、個人が既に不動産会社に管理業務を委託している場合や、個人が不動産会社に一括借り上げ(サブリース)となっている場合に、個人が自ら設立した会社(同族会社)への管理料の支払いを行う場合には、管理業務の実態が伴わないことが多く、個人の管理料の経費計上の妥当性が問題になります。

一括借り上げ方式(サブリース方式、転貸方式)

一括借り上げ方式の概要

建物を所有する個人から法人が建物を一括で借り上げ、法人が、テナントや入居者への貸付けを行います。法人が受け取る家賃収入と、法人が建物を所有する個人へ支払う借上げ家賃の差額分だけ、個人から法人へ所得が移転します。

一括借り上げ方式の留意点

法人がいくらで、個人から一括借り上げをするのかが、問題になります。法人が個人から建物を借り上げる、借上げ家賃の水準が低い場合には、個人から法人への所得の移転額が大きくなります。借上げ家賃の水準が低い場合には、課税庁が否認する事例が多く発生しています。

一般的に市中の管理会社が行う、借り上げ料は、家賃収入の85%から90%程度の場合が多いようであり、不動産管理法人の得る収入は、満室時の家賃総額の15%程度が上限とすべきと考えられます。

建物移転方式(建物所有方式)

建物移転方式の概要

個人が、法人に建物を売却して、建物が法人所有となります。不動産オーナーの法人活用の3つの方法のうち、法人が建物を所有する「建物移転方式」による法人の利用が、個人から法人への所得の移転効果が一番大きくなります。

通常、個人から法人への建物の売却は、建物の「簿価」で行います。法人は、「簿価」で建物を取得することから、通常の投資価額より割安に賃貸物件を取得することになります。

土地を移転するか?

建物移転方式で法人を活用する場合、通常土地は法人へ移転しません。土地を法人へ移転しないのは、下の理由です。

  1. 所得税対策であれば、収益は建物を所有することで生じるので、建物を移転すればよく、土地を移転する必要がないです。
  2. 個人から法人への資産(建物、土地など)の移転(売却)は、時価で行う必要がありますが、通常、土地の時価は高いため、法人での土地購入資金の資金負担が重くなります。
  3. 土地を個人から法人へ移転する場合には、不動産取得税、登録免許税の負担が大きくなります。
  4. 親や祖父母から相続している土地の場合、法人へ売却する際には、時価での売却となるため、取得価額が低い場合には、含み益に課税されてしまいます。

敷地権付きマンションの場合

個人で所有している賃貸物件が、敷地権付きマンション(マンションの一部屋)の場合、個人所有の敷地権付きマンションの法人への移転は、下の理由で、行わないことが多いです。

  1. 敷地権付きマンションの法人への移転は、敷地権付きマンションの土地と建物の移転になり、移転コスト(不動産取得税、登録免許税)がかかります。
  2. 敷地権付きマンションの土地と建物の時価が、個人が法人へ移転(売却)する対価の金額(売買金額)となりますが、敷地権付きマンションの時価は比較的、価額が高くなりがちですが、敷地権付きマンションの家賃収入の金額は、それほど高くないことが多いです。そのため、法人へ移転する収益が少なく、個人の税負担軽減の効果が低くなりがちです。

借地権上の建物

賃貸建物が借地権の上に建っている場合には、建物移転方式により、法人の活用は難しいです。借地権と建物は、一体であると考えるため、借地権を個人所有にして、借地権上の建物だけを法人へ移転する、ということが出来ないからです。借地権と建物を法人へ移転する場合には、地主に対して、譲渡承諾料の支払が必要となります。また、借地権の法人への譲渡は、譲渡時の時価が対価となり、含み益に対して、譲渡所得税が課税されてしまいます。