不動産管理法人とは
個人で不動産を所有する不動産オーナーが法人を活用する場合には、次の3つの方式により法人を活用します。
- 管理料方式
- 一括借り上げ方式(サブリース方式、転貸方式)
- 建物移転方式(建物所有方式)
不動産オーナーの法人活用の3つの方法でのうち、法人が建物を所有する「建物移転方式」による法人の利用が、個人から法人への所得の移転効果が一番大きくなります。建物移転方式(建物所有方式)では、個人が、法人に建物を売却して、建物が法人所有となります。
通常、個人から法人への建物の売却は、建物の「簿価」で行います。法人は、「簿価」で建物を取得することから、通常の投資価額より割安に賃貸物件を取得することになります。
不動産管理法人と相続税対策
建物所有型の不動産管理法人の相続税への影響は、次のようになります。
ポイントは3点あります。
- 土地の相続税評価額は減らない
- 個人資産の増加がなくなるのがメリット
- 相続税負担が増える場合に気を付ける
土地の相続税評価額は減らない
「法人化」(個人建物の法人への売却)を行う前は、土地と賃貸建物が個人所有ですので、土地の相続税評価は「貸家建付地評価」となります。「貸家建付地評価」では、更地評価(自用地評価)の約80%が土地の評価額となります。
建物移転方式(建物所有方式)では、個人が、法人に建物を売却して、建物が法人所有となります。土地は、個人所有のままです。
「法人化」(個人建物の法人への売却)を行った後は、土地を個人所有、建物を法人所有とする場合に通常、「無償返還の届出」を提出して、地代を固定資産税の2~3倍に設定します。この場合には、更地評価額の80%が土地の相続税評価額となります。
すなわち、「法人化」(個人建物の法人への売却)で、相続財産が減少する、または、相続税評価額が下がることで、相続税の節税になるということはありません。
個人資産の増加がなくなるのがメリット
「法人化」(個人建物の法人への売却)は、「個人資産の増加がなくなる」点にあります。
「法人化」すると、法人化した以後の家賃収入が、「法人」に入ってきて、個人に入らないようになります。家賃収入は、建物所有者に帰属するものですので、建物が法人所有となることで、家賃収入が個人でなく、法人に入ります。
例えば、個人所有の賃貸建物の家賃収入が年間1000万円ある場合には、単純に言うと、毎年、個人の相続財産が1000万円ずつ増加することになります。個人財産の増加は、相続税の負担増加になります。
同じケースで、建物が法人所有となる場合には、毎年の1000万円の家賃収入は個人財産ではなりませんので、個人財産の増加がありません。
このように、法人化の相続税対策の効果は、個人財産を増やさない点にあります。
個人の相続税対策の観点からは、法人の株主(出資者)を、子供世代にしておくと、法人に家賃収入が溜まって法人の株式の価値が増加しても、不動産オーナーの相続財産が増えることがありませんので、相続税の節税効果があるといえます。
相続税負担が増える場合に気を付ける
①法人への建物売却の相続税への影響
建物の相続税評価は、建物の固定資産税評価額により評価します。賃貸物件の場合、「建物の固定資産税評価額×70%」が、建物の相続税評価額になります。
他方、個人から法人への売却金額は、建物の未償却簿価の金額となります。そのため、相続税の観点では、個人所有の建物を法人へ売却することで、個人財産が「建物」から、「預金」へ変わることになります。
「建物」の相続税評価は、固定資産税評価×70%なのに対して、売買対価が未償却簿価であることから、個人が法人へ建物を売却することで、個人での相続税評価額が変わり、相続税額が変わります。
②相続税評価が下がる場合と上がる場合
「売買金額=未償却簿価 」が、「建物の固定資産税評価額×70%」を上回る場合には、個人の相続税評価額は、上がります。
他方、「売買金額=未償却簿価 」が、「建物の固定資産税評価額×70%」を下回る場合には、個人の相続税評価額は、下がります。
例えば、次のようなケースです。
個人所有の建物の未償却簿価が3000万円で、固定資産税評価額が1000万円の場合です。
この場合には、建物を個人所有している場合の建物の相続税評価額は、700万円(1000万円×0.7(貸家評価の減額))となります。
他方、個人所有の建物は、法人へ未償却簿価3000万円で売却します。そのため、法人へ建物を売却した後の個人の相続財産は、預金3000万円となります。
すなわち、法人化(個人建物の法人への売却)を行ったことで、相続財産が2300万円(3000万-700万)増えることとなります。
建物の未償却簿価は、建物の取得金額を建物の構造(木造、鉄骨造など)により、法定耐用年数により減価償却を行った後の金額です。他方、建物の固定資産税評価額は、建物の減価償却とは異なり、固定資産税評価のルールにより計算されています。建物の未償却簿価と固定資産税評価とは、別々に計算しているため、このようなことが起きます。
③留意点
建物の未償却簿価が、固定資産税評価を大きく上回る場合には、相続税評価額が上がる(相続税の負担が増える)ため、次のような点に留意が必要です。
80代、90代などで、相続発生が近い可能性があるのであれば、所得税の節税効果がある場合でも、相続税負担が増えるため、実行を慎重にすべきです。
60代などであれば、相続発生までに期間があるので、相続税評価額が増えた部分について、別途、相続税対策が可能とも考えられますので、所得税対策を優先しても良いかもしれません。
