遺言がある場合に「未分割申告」ができるか?

遺言がある場合の未分割申告

遺言書の内容や効力について相続人間で争いがある場合に、あえて遺言書を無視して、遺産を未分割とする相続税の申告が行われることがあります。

遺言がある場合に、相続税申告を未分割で行うことができるのか、また、遺言書を無視して未分割申告を行ったのちに、遺言の内容に基づいて更正の請求ができるのかどうかが問題となります。

遺言がある場合に、相続税申告を未分割で行うことができるのかについて、「包括的な相続させる遺言」や「包括遺贈」の場合と「特定の財産を特定の者に相続させる遺言」の場合とに分けて整理します。

「包括的な相続させる遺言」や「包括遺贈」の場合

遺言の内容が「相続分の指定」の場合には、遺産分割協議が必要です。

例えば、「私の全財産の3/4をAに、残りの1/4をBに相続させる。」という遺言の場合、AとBとが、どの財産を取得するのかを遺産分割協議をする必要があります。

そのため、遺産分割協議が相続税の申告期限までに整わない場合には、遺言があっても、「未分割申告」をします。このような場合には、後日、遺産分割協議が整えば、更正の請求が可能です。

「特定の財産を特定の者に相続させる遺言」の場合

遺言と異なる内容の遺産分割協議書の作成

特定の財産を特定の者に相続させる内容の遺言がある場合でも、相続人全員の同意があるときには、遺言と異なる内容で、遺産分割協議書を作成することができます。相続税の申告期限までに、遺言の内容と異なる内容での遺産分割協議が成立する場合には、成立した遺産分割協議の分割により、相続税の申告を行います。

他方、遺言と異なる内容で、遺産分割協議をする場合で、相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立しない場合には、相続税申告書を「未分割申告」で提出することはできるのでしょうか?また、その場合でも、「更正の請求」の対象となるのでしょうか?

「未分割申告」の後に遺産分割協議が成立する場合

特定の財産を特定の者に相続させる内容の遺言がある場合でも、遺言を無視して、相続税申告書を「未分割申告」で提出することはできます。また、遺産分割協議が成立した後、「未分割遺産が分割されたこと」として相続税の「更正の請求」を行う場合には、相続税の更正の請求は、認められます。

ただし、これは、税務署に対して、当初から遺言書はなかった、という立場をとることが前提となります。なぜなら、相続税法の規定に基づく更正の請求は、「未分割遺産が分割された場合」や「遺言書が発見された場合」など、限定された事由のみとなり、当初に遺言書があったのだと、更正の請求の事由にあたらないからです。

このような対応は、当初から遺言があったという事実と異なりますので、正しくない対応とも思いますが、遺言がある場合でも遺産分割調停を行い、遺言と異なる内容の遺産分割を行うことはありますので、実務上、この様な対応をとることはあるものと思います。

「未分割申告」の後に「遺言」により更正の請求ができるか?

上のような場合で、相続税申告書を「未分割申告」で提出した後に、遺産分割協議がまとまらずに、遺言により、更正の請求をして、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用することはできるでしょうか?

相続税法の規定に基づく更正の請求は、「未分割遺産が分割された場合」や「遺言書が発見された場合」など、限定された事由のみとなります。当初から遺言書がある場合の遺言書による更正の請求は、「未分割遺産が分割された場合」や「遺言書が発見された場合」に該当しませんので、相続税の更正の請求の対象とはなりません。

特定の財産を特定の者に相続させる内容の遺言があり、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用を考えていたとしても、遺言と異なる内容での遺産分割協議書を行う場合には、当初申告を未分割申告して、その後に「遺言による更正の請求」はできず、小規模宅地等の特例の適用もできないことに留意が必要です。