子どもが親の医療費を負担して、その後、親が亡くなった場合には、子どもが負担した医療費は、被相続人(親)の相続税申告で、債務控除の対象となるのでしょうか?
目次
子どもが負担した親の医療費の債務控除の考え方
扶養義務の履行といえるか?
子どもが親の医療費の支払いを行うのが、民法上の扶養義務の履行(民法877条)にあたる場合には、子どもは自らの支払義務のある親の医療費を支払ったことになります。そのため、子どもは、親にその金額を請求することはできず、その医療費は親の債務でありませんので、被相続人(親)の相続税申告で債務控除の対象とはなりません。
しかし、「扶養義務」は、「扶養義務のある者が、自分の社会的地位、収入等に相応した生活をしたうえで、余力のある範囲で、生活に困窮する親族を扶養する義務」とされ、親が相続税申告の対象となるほどの財産がある場合には、子どもが、親に対して、「経済的扶養(金銭扶養)」を負っていたとはいえません。
債務控除の対象となる可能性のある場合
通常、入院代などの医療費を負担するのは、患者である親自身であり、その医療費は親が自分で負担すべきものです。それを子供が支払ったことが、親に代わって子供が立替払いをしたものである場合には、子どもは親に対して、医療費の返還請求を行うことができます。こう考えると、子どもが支払った医療費は、被相続人(親)の相続税申告で債務控除の対象となるように思えます。
また、子どもが親から依頼を受けることなく立替払いした場合には、子どもは親の医療費の支払いという事務処理をしたことになり、民法上の事務管理者として、子どもは親に対して医療費を請求できます(民法697条、702条)。この場合にも、子どもが支払った医療費は、被相続人(親)の相続税申告で債務控除の対象となるように思います。
債務控除の対象とならない場合
相続税の計算で、相続財産から控除できる債務は、「確実であると認められる債務」が要件とされ、確実であると認められる債務とは、「相続人がその債務を履行し相続財産の負担となることが必然的な債務」とされています。
子供が親の医療費を立替払いをし、その後、親に対して何らの請求をしないことは、世の中的には、多いのではないでしょうか。また、子供が、親子間の立て替えた医療費を都度、精算しないで、そのまま相続を迎えてしまうことも多いでしょう。子供が親の医療費を立て替えて、何らの請求もしていないのだと、子供が親に医療費相当額を贈与したと考えることもできるように思います。
このような場合には、子供が立て替えた親の医療費が、相続税の債務控除の対象となる「確実であると認められる債務」=「相続人がその債務を履行し相続財産の負担となることが必然的な債務」とは、言えないものと思います。
具体的なケースでの検討
生前に親子間での医療費の精算がない場合
親の生前、子供が親の医療費を負担していて、子供は親が亡くなったら相続財産から精算するつもりで、生前に親子間での医療費の精算は行っていませんでした。
子供が親の医療費を負担していた場合でも、生前に親子間での医療費の精算を行っていなかった場合には、相続税申告の債務控除の対象とはならないものと思います。
子供が親の医療費を負担していた場合でも、生前に親子間での医療費の精算を行っていなかったのであれば、相続が発生した後に、親は子供に対する返済義務を負っていたと考えるより、子供は親に対して医療費相当額を贈与していたと考える方が妥当と考えられます。
そのため、このような場合には、子供が親に立て替えた医療費を相続税申告時の債務控除とすることはできないと考えられます。
生前に親子間での医療費の精算がある場合
子供が親の医療費を立て替えていて、定期的に精算を行っていましたが、最後の精算を行う前に親が亡くなってしまいました。
子供が親の医療費を立て替えていて、定期的に精算を行っていたが、最後の精算を行う前に親が亡くなった場合には、精算が未了の立替えた医療費は、相続税申告の債務控除の対象となるものと思います。
親が亡くなる前(生前)に、親が子供が立て替えた医療費の精算を行っている場合には、精算が未了の立て替えた医療費についても、親は負担する義務を負っていたと考えることに妥当性があります。
そのため、このような場合には、子供が親に立て替えた医療費のうち、精算未了の金額について、相続税申告時の債務控除とできるものと考えられます。
