貸付事業用宅地等の評価減

評価減の対象となる貸付事業

小規模宅地等の評価減の特例では、貸付事業は下のように分類されます。

  • ①事業的規模での不動産の貸付
  • ②事業的規模に至らない不動産の貸付
     ②-1、相当の対価を得て継続的な貸付(事業に準ずるもの)
     ②-2、相当の対価を得て継続的でない不動産の貸付

貸付事業用宅地等として評価減の特例の対象となる「貸付事業の用に供された」宅地は、上の①「事業的規模での不動産の貸付」、②-1「事業的規模に至らない不動産の貸付のうち相当の対価を得て継続的な貸付(事業に準ずるもの)」、をいいます。

②-2の「事業的規模に至らない不動産の貸付のうち相当の対価を得て継続的でない不動産の貸付」は、貸付事業用宅地等として、評価減の対象とはなりません。

3年以内貸付宅地等

3年以内貸付宅地等とは

相続開始前3年以内に、新たに貸付事業の用に供された宅地等は、小規模宅地等の評価減の特例の対象となる貸付事業用宅地等から除かれます。

新たに貸付事業の用に供された場合とは、次のような場合です。

  1. 新たに貸付事業用の宅地を取得した場合
  2. 貸付事業以外に利用していた宅地を新たに貸付事業で利用した場合

特定貸付事業の場合

事業的規模での不動産の貸付を特定貸付事業といいます。被相続人が、特定貸付事業を行っていた場合には、相続開始前3年以内に、新たに貸付事業の用に供された宅地であっても、貸付事業用の評価減の対象となります。

貸付事業用宅地の特例の適用関係のまとめ

貸付事業用宅地の特例の適用関係をまとめると次のようになります。「〇」が評価減の適用のある場合です。「×」は、評価減の適用がありません。

3年以内貸付宅地3年超貸付宅地
事業的規模の場合
事業的規模でない場合相当の対価を得て継続的な貸付×
相当の対価を得て継続的でない不動産の貸付××

各ケースでの特例の適用の有無

近隣賃料相場より安い場合

小規模宅地等の評価減の特例の対象は、「事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの」(措置法施行令40の2)です。

ここでいう「相当の対価」とは、「貸し付けられている不動産の所在、その施設等の状況からみた通常の相場」と考えられます。そのため、賃料が相場水準に比べて妥当であるかが、特例適用の判断基準となります。

収支が赤字であることだけで、特例の適用が認められないということにはなりません。

ただし、収支の赤字が巨額で、継続が難しいような場合には、経済取引として不合理でないのか個別に判断すべきでしょう。

賃料そのものが純粋経済取引として交渉の結果決まったものであれば、結果として近隣相場賃料より安い場合でも特例適用の対象となると考えられます。

他方、親族に対する貸付で、賃料水準が相場賃料より相当低めに意図的に設定している場合には、特例適用の対象とはなりません。

屋根のない駐車場の場合

小規模宅地等の評価減の特例は、「建物又は構築物の敷地の用に供されているもの」の敷地が対象となります(措置法69条の4第1項)。

そのため、建物も構築物も設置されていない駐車場は、小規模宅地等の評価減の特例の適用はありません。

逆に、屋根などの建物のない駐車場であっても、アスファルトやフェンスといった構築物の設置された駐車場は、小規模宅地等の評価減の特例の適用があります。

砂利敷きの駐車場

一般的には、砂利敷きも構築物に該当するため、小規模宅地の特例の適用が可能と考えられます。

ただし、砂利が少なくなり、土がむき出しの場合などには、砂利が構築物と認められない場合もあるものと思います。確実に、小規模宅地等の評価減の特例を受けるには、アスファルト舗装をするのが望ましいと考えます。

なお、耐用年数通達 2-3-13では、「表面に砂利、砕石等を敷設した砂利道又は砂利路面については、別表第1の「構築物」の「舗装道路及び舗装路面」に掲げる「石敷のもの」の耐用年数を適用する。」と規定があり、砂利敷きを構築物に該当すると考えるのは妥当と考えます。

被相続人所有の宅地を賃借人である子供が相続した場合

貸付事業用宅地等は、「事業継続」が要件となります。親が子供に宅地を貸して、賃料を受け取っていた場合に、その宅地を子供が相続した時に、貸付事業を継続していたといえるかが問題となります。

相続により、「賃貸人=賃借人」となる場合は、民法上の「混同」にあたり、貸付事業を継続しているといえません。

そのため、この様な場合は、小規模宅地等の評価減の特例の適用はありません。

建物と土地の取得者が異なる場合

父所有の賃貸アパート1棟について、父がなくなり、母が建物を、子どもが敷地を相続した場合には、貸付事業用宅地等の評価減の対象となるのでしょうか?

建物と土地の取得者が異なるため、父の貸付事業を引き継ぐのは建物を取得した母であり、土地を相続した子供は父の貸付事業を引き継いだことになりません。

そのため、この様な場合は、小規模宅地等の評価減の特例の適用はありません。

賃貸アパートの建替えの建築工事中に相続が開始した場合

従前、アパート経営をしていて、建替えの建築工事中に相続が発生した場合には、その建物等の完成後速やかに事業の用に供されることが確実である場合には、特例適用があります(措置法通達69の4-5)。

新たな賃貸アパートの建築中に相続が開始した場合

特例適用の対象は、相続開始時に現実に貸付事業の用に供されているものです。新たに賃貸用マンションを建築する場合や、新たに建築した建物等の賃借にの募集などの貸付準備が行われているにすぎない場合には、相続開始時に現実に貸付事業の用に供されているといえません。

そのため、この様な場合は、小規模宅地等の評価減の特例の適用はありません。

親族への賃料水準を上げてから3年以内に相続が開始した場合

親族への貸付を近隣賃料相場より著しく安い金額で行っている場合で、賃料の水準を近隣相場へ引き上げてから、3年以内に相続が開始した場合には、3年以内貸付宅地等に該当して、貸付用の評価減の特例の対象とはならないのでしょうか?

賃料水準を引き上げる前から、貸付自体は行っていることから、3年以内貸付宅地等に該当せず、貸付用の評価減の特例の対象となるようにも思えます。しかし、貸付事業用宅地の評価減の対象となる貸付事業は、相当の対価を得て継続的な貸付をいいます。そのため、相当の対価といえる賃料水準に引き上げた時から、貸付事業用の評価減の対象となる貸付事業を開始したと考えるものと思われます。

賃料水準を近隣相場に引き上げてから、3年以内に相続が開始した場合には、3年以内貸付宅地等に該当して、貸付用の評価減の特例の対象とはならないものと考えられます。