私は物納できる?対象となる人・財産の条件を徹底解説

「相続税、現金で納めるのが難しいかもしれない…」「活用していない土地を納税に使えないだろうか?」

相続を控えた資産家の皆様から、このようなご相談をいただくことが増えています。相続税の納税方法の一つである「物納」は、現金一括納付が原則である日本の税制において、非常に重要な選択肢です。

しかし、物納は誰でも、どんな財産でも利用できるわけではありません。申請には「人」と「財産」に関する明確な条件が定められています。

今回の記事では、ご自身の状況が物納の条件に当てはまるかを確認するための、2つのセルフチェックポイントを徹底解説します。

条件1:【人】あなたは物納を申請できるか?

物納を検討する上での大前提は、「金銭で相続税を納付することが困難である」と税務署に認められることです 。納税資金に余裕がある場合は、物納を選択できません。

その「困難である」ことを客観的に示すのが、「金銭納付を困難とする理由書」という書類です 。この書類に基づき、物納できる金額の上限(物納許可限度額)が算出されます 。

<物納許可限度額の計算イメージ>

A. 納付すべき相続税額 

- B. 納期限までに納付することができる金額 

- C. 延納(分割払い)によって納付することができる金額 

= 物納許可限度額 

ご自身の資産状況: 上記の「B」には、相続した現金・預貯金だけでなく、申請者ご自身が元々保有している資産も含まれます(3ヶ月分の生活費などを除きます) 。

ご自身の収入: 上記の「C」は、給与や不動産収入といった年間の所得から生活費などを差し引いて計算されます 。

このため、同じ財産を相続した兄弟であっても、ご自身の資産や収入状況によって、物納できる限度額は全く異なります 。まずはご自身の状況が「金銭納付が困難」といえるか、専門家と確認することが第一歩となります。

条件2:【財産】その財産は物納に使えるか?

ご自身が物納申請可能な条件を満たしていても、次に「物納に充てる財産」が国の定める基準をクリアしている必要があります。大前提として、相続または遺贈によって取得した日本国内の財産である必要があります 。

物納できる財産の「順位」

物納できる財産には、国が定めた優先順位があります 。不動産は最も優先順位の高い「第1順位」に区分されています 。

第1順位:国債・地方債、不動産、船舶 

第2順位:社債、株式、証券投資信託など 

第3順位:動産 

【最重要】絶対に物納できない「管理処分不適格財産」

相続財産の中には、国の管理や処分に適さないため、物納申請そのものが認められない(却下される)財産があります 。これらの問題を申請時点までに解決しておかなければ、物納はできません 。

以下に代表例を挙げます。ご自身の財産が該当しないか、必ず確認してください。

・抵当権などが設定されている不動産 

・権利の帰属について争いがある不動産 

・境界が明らかでない土地 

・隣地所有者との争訟によらなければ通常の使用ができない不動産 

・他の土地に囲まれて公道に通じていない土地(通行権が不明確なもの) 

・敷金の返還義務など、国が債務を負担することになる不動産 

申請の優先度が下がる「物納劣後財産」

上記の不適格財産とは別に、物納に適した他の財産がない場合に限って申請が認められる「物納劣後財産」という区分があります 。以下に代表例を挙げます。

・地上権や賃借権などが設定されている土地 

・建築基準法の道路に2m以上接しておらず、再建築ができない土地 

・ご自身が居住用や事業用として使っている建物およびその敷地 

一見すると不利な条件に思えますが、この条件は相続人ごとに判断されます 。例えば、ある相続人が物納劣後財産しか相続しないような遺産分割を行うことで、戦略的に物納の対象とすることも可能です 。

まとめ:正確な判断には専門家の知識が不可欠です

物納のセルフチェックはいかがでしたでしょうか。

ご自身が物納を申請できるか、そしてどの財産を物納に充てられるかは、個人の資産状況や財産の個別事情によって大きく左右されます。

特に「管理処分不適格財産」に気づかずに申請して却下された場合、原則として金銭での一括納付を求められることになりかねません 。

自己判断で進めるのではなく、まずは相続税と不動産に精通した専門家にご相談いただくことが、大切な資産を守り、円滑な納税を実現するための最も確実な方法です。

吉祥寺の税理士法人アンサーズ会計事務所では、不動産物納に関する豊富な経験と知識に基づき、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適な納税プランをご提案します。少しでもご不安な点がございましたら、まずはお気軽にご相談ください。